擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
教師と生徒の逸脱


「見たいの、ある?」

キャラメルの甘い香りが漂う、映画館。

宣伝ポスターを並んで眺めていると、本当に恋人同士みたいだ。

「えーっと・・・」

本音の私なら、迷わずこの洋画のアクション物。

「これ、見てみたいです」

建前の私が示したのは、隣の恋愛物のポスター。

『今年度、最高のラブストーリー』

なんて、キャッチコピーが胡散臭くて、普段の私なら見向きもしない。

けれど、今日のテーマは佐久間さんに似合う女性、だ。


髪の毛を巻いてみたり、ピンク色のアイシャドウを使ってみたり、スカートを履いてみたりした。

美原先生から貰ったグロスはもちろん使用中。


『似合わないよ』


悪魔の声が過ぎったけど、すぐに追い出してやった。

大人をからかって遊んでいるだけなんだから、聞いてやる義理なんてない!



Mサイズのポップコーンを1つとドリンクを2つ持って、席に着いた。

1つのポップコーンを分け合うって、これまた恋人同士っぽい。

周りを見ると、さすがは「今年度、最高のラブストーリー」

「カップル、多いですね・・・」

「俺達もそう見えるんじゃない?」

「えっ!?」

弾かれるように隣に顔を向けると、子供っぽく笑う佐久間さんの目と合う。

それとほとんど同時に照明が暗くなり、ホッとする。


きっと、顔が真っ赤だーー。


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