近くにいた王子


どこかに出かける様子のアユ。


「こんな朝っぱらから? 迷惑なやつだねー」


…お前のせいだよ、お前の。

しかも、何気に失礼だし。


「どっか行くんか?」

「ん? ああー、啓太が今日退院だから、病院行くの」


聞かなきゃ良かった。

こんな幸せそうなアユの顔見たら

何も言えなくなんじゃねーか。


「ふぅん。気ぃ付けてな」


俺はそれだけ言うと、アユに背を向けて歩き出した。


「あっ、光!」


呼び止められて、振り返る。


「啓太にあげようとクッキー焼いたんだけど、光の分も焼いたから食べていーよ! 光の家に持ってったから」




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