桜の約束



驚く彼と目を合わせながら、もう一度同じ言葉を告げる。



「あなた、誰?」



悲しそうに顔を少し歪め、それから無理に作った様な笑顔でこちらを見た。



「俺は…野上 守。桜の…彼氏、だよ」



「のがみ…まもる…?」



聞き覚えが、ある様な気がした。



何処かで引っかかる様な。



けれど、深く考えると頭がまたズキズキと痛んだ。



「…先生、呼んでくる」



私の様子を痛ましげに見ていた野上くんは、名残惜しげに私をもう一度見た後、背中を向けて歩き出した。



病室を出る。


少し、遅い足音が聞こえた後、パタパタと走るような速い足音に変わった。



野上くんが病室にいない間に、痛みで中断された思考を、もう一度だけ繰り返した。



野上…守…のがみ…まもる…?



考える。



思い出せない。



わからない。



ぼんやりとした輪郭が、頭の中に映される。



わからない。















_____あなたは、誰…?














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