今さら恋なんて…
deux ~帰り道~
「わー。もうすっかり真っ暗だね」
「本当ですね。しかもちょっと寒くなってきましたね」
龍哉はそう言うと、あたしの腰を抱いた指に少し力を込めた。
電車を降りた時にはもう辺りは暗くて、“送る”と言ってくれた龍哉に甘えることにした。
春、と言ってもまだ夜は寒いんだよね…。
「大丈夫ですか?司さん」
「ん…。上着持ってくればよかったかな」
今日は“暖かくなる”って天気予報で言っていたから薄着で来ちゃったんだよね…油断した。
「すみません。何も貸せなくて…俺、これ脱いだら半裸になってしまうんで…」
龍哉は申し訳なさそうにそう呟く。
「……ぷっ」
あたしにセーターを貸して半裸で歩いてる龍哉を想像してしまい、あたしは思わず吹き出した。