クールな彼と放課後の恋
「…藤川」

「なにー?」


自分の席でカバンから荷物を出していると、稲瀬が私を呼んだ。

私は荷物を机に入れながら、返事をする。





「血出た」

「え?また!?」


手を止めて、クルッと稲瀬の席を見る私。

そしてカバンを持って席を立ち、小走りで稲瀬に近づいた。





「どうしたのこれ?また包丁?」


稲瀬の中指に、結構深い切り傷があり、血が指に垂れている。




「うん」

「昨日はうちでご飯食べて帰ったのに、なんで包丁使ったの?」

「夜中腹減ったから、飯作ろうとしたら切った…」

「・・・・」


なんかかわいそうになってきた(汗)


年頃だから、夕食あれだけ食べても…夜中普通にお腹減るんだね。




「ちょっと待って…消毒しないと」

「…消毒液持ってんの?」

「ま、まあね…」


この前指ケガしたの見てから…

絆創膏だけじゃ、なんとなく不安になって…持ち歩く用の消毒液買っちゃったよね。





「さすがカリスマ主婦」

「しゅ、主婦じゃないってば//」


高校生です!



私はポーチから、消毒液とティッシュを出した。





「ちょっとしみるかも…」

「ん…」

「………」


稲瀬が、私に手を差し出す。




「…触るよ?」

「は?触れよ(汗)」


う…///



変なこと言っちゃった…!

意識し過ぎだよね、普通に普通に。




私は稲瀬の手を下からそっと添えて、中指に消毒液を含ませたティッシュで、優しく押さえた。



稲瀬の手、あったかい…

ヤバイ…手震える・・・



恥ずかしさと、緊張を押さえながら消毒終え…次はポーチから絆創膏を取り出した。





「あのさ稲瀬…」

「何?」


絆創膏を指に貼りながら、稲瀬に話しかける。





「…できるだけ…夕食はうちで食べたら?で、帰りに別に何か作ってあげるから、持って帰って夜中お腹空いたら食べなよ…」

「・・・・・」


稲瀬の指の傷を見ていたら、そんな言葉が出てきた…





「ほら…日向も修君と仲いいしさっ、うちは全然大丈夫だから。でも無理にとは言わない…っ!…」


ぎゅ



すると稲瀬は、絆創膏を貼っている私の手を握った。そして…





「そうする…」


そう言って、優しく微笑んだ。
< 97 / 246 >

この作品をシェア

pagetop