光ちゃん
「…じゃあ、行くね」
私は、バスに乗り込もうとする光ちゃんの手を掴んでいた。
「光ちゃん…」
わかっていた。でも止めずにはいられなかった。
「…行かないで」
涙が止まらなかった。
「い、行くっなら…私っも行くっ!」
泣いていて上手く言えなかった。
「佐希ちゃん…」
光ちゃんは私の手を強く握り返してこう言った。
「佐希ちゃんは、もう俺よりお姉ちゃんなんだよ。いつまでもそんな泣き虫じゃダメじゃんか」
顔を上げると、そこにいたのはあの時の光ちゃんだった。
「佐希ちゃんはまだこのバスには乗れないんだ…」
そう言うと光ちゃんは私の手をそっと離した。
「そうだ…あの時は見つけられなかったけど、見つけたよ…もう片っぽの靴」
私に靴を手渡すとゆっくりとバスのドアが閉まった。
「光ちゃん!」
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