四十九日間のキセキ
「ごめんなさい紗弥加」

「なに泣かないでよお母さん、どうして突然泣き出すの?」

「何でもないの。ごめんね突然泣き出してしまって」

「もしかしてこの前の検査結果がよくなかったの? まさか転移とか、それとも再発?」

「そういう訳じゃないから安心しろ」

孝之が否定するがそれでも疑問の声は止まらなかった。

「じゃあどうして退院できないのよ。それに突然お母さんが泣き出すのも変でしょ」

「だから少し治りが遅いだけなんだって」 

孝之が言うが、紗弥加はその言葉を信じることができなかった。

「嘘言わないで。それだけならお母さんが泣くことないでしょ?」

その言葉に観念し、仕方なく事実を告げることにした孝之。

「分かったよ。本当のことを言うからそう責めないでくれ」

「やっとほんとの事を言ってくれるのね」 

その紗弥加の言葉に続き仕方なく事実を告げる孝之。

「実は昨日紗弥加の退院をお願いしに行ったんだが、その時に先生から退院は無理だと聞かされた」

「どうして無理なの?」

紗弥加の尋ねる声に続ける孝之。

「紗弥加落ち着いて聞いてくれ」

「うん」

「紗弥加のがんなんだが肺への転移が確認されたそうだ」

「やっぱりそういう事なのね」

ポツリと呟いた紗弥加の瞳からは自然と涙があふれていた。
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