ゆとり社長を教育せよ。


俺の言葉を聞いて、美也が膝の上で握りしめている手にさらに力がこもったのを見たときは胸が痛んだけど……


そこまでツライってことは、美也の心の内はきっと。


“充のことが大好き。本当は別れたくなんてなーい!”


……ってことだと思う。ちょっと希望も交えたけど。


別れたって、仕事上いつも一緒にいられるわけだし、今回の件と、それから新商品開発の件が片付いたところで、もう一度美也に告白すればいい。

全く、こんなことで俺が美也を諦めるとでも思ってるのかねぇ、犯人は。


俺の背中を押したヤツ。そして、それとは別の共犯者にもなんとなく心当たりがあるような気がするけど、まだ証拠がない。

とりあえず、それをつかむこと。そして新商品の開発。

どちらも味方が欲しいところだけど、あいにく社内で俺の味方をしてくれる人間って少ないんだよね。

今まで散々ゆとり社長を演じた自分のせいだけど。


でも、たった一人だけ。

俺のため、という理由じゃ動かないかもしれないけど、美也のためなら協力してくれるんじゃないかなーと思う人がいる。


美也とふたりでお酒を飲んでたっていう状況には絶対に下心があったと思う。

だけど実際は何もせず、それどころか俺をけしかけるようなことすら言って、結果的に俺たちを結び付けてくれるきっかけを作ってくれた、開発部の……確か、名前はそう――


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