ゆとり社長を教育せよ。


翌朝、私が目覚めたときには隣に充の姿がなくて、とりあえず手近にあった充の服を拝借してリビングに向かうと、ソファでテレビを鑑賞中らしい充のふわふわ頭が見えた。


「……おはよ。何見てるの?」


後ろから声を掛けると、振り向いた充が透明なプラスチックのケースを私に差し出した。


「コレ。昨日送られてきてたの忘れてた」

「なぁに? これ……」


ケースを裏返すと、そこには大き目の付箋がついていて。


【社長さんへ。
あのときのCMが出来上がったので、予告通り送らせていただきました。とてもいい出来です。
それと、高梨さんに謝っておいてください。俺、最近本気で好きな人ができたんです。なので、俺のことは諦めてくださいって、お伝えください。
高柳遠矢】


「……な、なんなの。このマイペース過ぎるメッセージは……」


俺のことは諦めてください、って。私がいつあなたを好きだと言ったのよ!


「まあその手紙もちょっとアレだけどさ。それよりこのCMやばい。俺たぶん見るたび嫉妬するんだけど……」


手元のリモコンを操作して、映像の頭出しをした充。

そして大画面過ぎるテレビに映し出されたのは、そりゃもうラブラブですっていう感じにいちゃつく私と高柳さんの姿が。


う、うわぁ。演技とはいえ、高柳さんの恋人っぽく振る舞ってる自分が気持ち悪い……


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