私んちの婚約者
まるでアイドルの武道館コンサート並みの大盛況に、若干、いやドン引きの私。
そんな私に気付いて、カイ兄はニヤリと笑う。

……っ、さっきイヤに大人しく出て行ったのはこの為か!!
私を驚かせたかったに違いない。……なんて大人げない!

カイ兄は長い脚で颯爽と壇上に上がって。


「氷崎甲斐です。よろしく。特に可愛いおじょーちゃん方」
と挨拶した。

だから、社会人の自覚を持て……!

ハートの飛び交う女子大生たちに、気を良くしたのか、カイ兄はニヤリと笑う。

「俺は実践型だからなあ?見て覚えろよ?」

そして私を手招きした。

「はいそこの生意気可愛いおじょーちゃん、お手伝い願いま~す」

マジックじゃあるまいし、なんで手伝いが要るのよ!?
い、嫌な予感……。
私が恐る恐る壇上にあがると。


「え~シャッターチャンスは、逃すな。二度はねぇぞ。てゆーか待つよりむしろ作れ」

そうのたまったカイ兄ががっしりと私を掴む。
そのまま抱き締めるように羽交い締めにされた。
どよめくギャラリー。

くそ、予想してたけど、予想してたのにい!!
あっけなく捕まった自分の学習能力どこ行ったと言いたい。

もがいて逃げようとするけれど、彼の腕はちっとも動かない。
どうやってんのこれ、全然外れないじゃん!

カイ兄は私に顔を寄せる。
まるでキスギリギリなんだけど!?

「近い!近いよ!!」

私の悲鳴に構わず、カイ兄が続けた。

「は~い、こうすれば相手は動けません。ほら、シャッターチャンスってのは今だろーが」

こら!!なぜ教授まで写メを撮る!?
そして男子!なぜメモをとる!!?

「しかし合意がないと犯罪でーす。よい子の皆はやっちゃダメ~」


ぷち。


「お前の存在自体が犯罪だあああっ!!」


私は思いっ切り腕を振り上げて、カイ兄を殴り倒した。

「梓……お前腕上げたな。ダイヤで殴るとは反則だぜ」

「モース硬度10の威力を思い知ったか!!」

この変態バカ叔父!
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