私んちの婚約者
私達が家に戻ると、門の前にスーツ姿の男が立っていた。

「蓮也?」

「蓮也兄さん……」

こちらに視線を向けた蓮也を見て、透也はきまり悪そうに呟いた。
こんな手回しが出来るのはただ一人。私は隣の愁也を見上げる。

「連絡したの?」

愁也は嫌そうに頷いた。

「まあね。あいつにこのまま居座られるストレスに比べたら、ほんの15分間、胃を保護するだけだ」

……そんなに決死の覚悟がいるのね。なにせ悪魔召喚だもんね。

ヨシヨシと愁也の腕を撫でてやりながら、私は立ち止まってしまった透也を見る。
彼は黙って蓮也を見つめていた。

私達に気付いた蓮也が、これまたものスッゴく嫌そ~に近付いてくる。相変わらず失礼全開な奴ね。


「透也」


蓮也に呼ばれて、ビクリとする透也は、まるで飼い主に叱られたチワワみたい。
だけど透也チワワはお座敷犬を卒業することに決めたらしい。
顔を上げた。

「兄さん……俺は愁也には、なれない」

透也がまっすぐ視線を蓮也に向けて言った。
蓮也と視線を合わせた透也。

多分、今までなら、うつむいてたよね。
成長したなあ、スネちゃま。

同じ事を思ったのか、蓮也が皮肉気に言う。

「こんな扱いづらい男が二人といてたまるか」


そうして、蓮也は愁也に向き直った。

「不本意だが。うちの愚弟が世話になった」

「ねえねえ、私!拾ったの、私!お世話したの、私!!」

私が自分の顔を指差してアピールするけど、蓮也は無視。

むっかつくぅう!!何か投げてやろうかな。
あ、かたつむり発見。悪魔祓いに効くかしら。

「高宮梓、何を考えているのか知らんが、とりあえず一歩もそこを動くなよ」

チッ、バレたか。

ぶーっと膨れる私を愁也が頭を撫でて宥めた。
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