私んちの婚約者
「ねぇ、俺の勘違い?
連絡も無しで散々心配させといて、梓は他の男とデートして酒呑んで来たって言った?」


愁也の声が低くなったのに気付いたけど。
もう止まらない。


「そうだよ!!
だけど心配してなんて頼んでない!」

自分だって。
美人とウキウキショッピングしてたじゃないか!
どうして私だけ怒られるの。


「……ああ、そう」


吐き捨てられた、愁也の冷たい声。

思わず顔を上げた私に入れ替わるように視線を逸らすと、スッと私の横をすり抜けて、彼は部屋を出て行った。


「ああ……やっちゃった……」

がくんと膝をついて、私は床に座り込んだ。


……愁也を本気で怒らせた。


その事実に、ただ茫然として。
しばらくしてから、やっと自覚して。

「……っ」

気がついたときには私は独りぼっち。


ボロボロ涙が零れて、床に落ちていった。
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