私んちの婚約者

その日の夕食は、なんだか変だった。

……変なのは、私だけだけど。


愁也と囲むテーブルはなんだかひどく落ち着かなくて、でも嫌な緊張じゃないんだけど。
どうしていいか分からない。


「何、食べないの?梓」

愁也が箸の止まった私を見て言う。
『珍しい、雨かな』なんて一言は余計だ。


「うん……」

「じゃあちょうだい」


彼はテーブルの向こうから、あーん、と口を開ける。


……あなた、いくつですか?


半分呆れながらも、私のお皿の唐揚げを、愁也の口に放り込んでやろうとして。
まともに正面から、彼の顔を見てしまった。


うわ。何この男。
か、可愛いんだけど。

やば、顔熱い。

うわわわわーーーー。



「受け取れぇぇっ!!」



唐揚げを、
その口に、
投げ込んだ。


「……梓、あんたには食べ物すら凶器なわけ?」


やっぱり、い、痛かったよね、すんません。

食べ物を粗末にしてはいけません!わかってる!でも耐えられなかったのおおお!!
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