私んちの婚約者
愁也に連れられて、教会の裏手へと来る。


「わあ……」


そこに広がる、美しい景色。
海へ続く丘には小さなアーチと、離れた両側に整然と並ぶ白い石。
アーチに絡まる、つる薔薇がグラデーションカラーの花のトンネルを形作り、足元に茂る芝が緑の絨毯となっていて。
アーチの下に沿うように小さな花が両側に咲いて、教会から丘までの道を作っている。

その絵葉書みたいな光景に目を奪われた。

綺麗だなあ……。
ううん、でも、それよりも。

私、ここを知ってる。


ーーどうして。


疑問に思うのと共に。
愁也がどれくらい私の事を考えているのか、
私を想っていてくれているのか、

一瞬で思い知らされた。



「愁也……」



震える声で、彼を呼んだら。
愁也が掴んでいた手を引き寄せて、その胸に私をしっかりと抱き締めた。


「イタリアも良いけど。
結婚式するなら、ここだろ?」


耳元で囁く声は、どこまでも甘くて。
その唇が優しくキスを落として。
私の頬を涙が伝っていった。



並ぶ白い石は、墓石。


ママの眠る場所。



この教会は、私のママの居る場所――
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