私んちの婚約者
「ほら」

あたしに手を差し伸べて、椅子から立たせた透也の顔を見上げた。

ほら、そっくりじゃないのよ!そっくり……。
そっくり……か?

ああ、でもなんだかもうあまり似てない気もする。
なんて言うか、顔つきが男らしくなったっていうか……。

ハッ、あたし何言ってるの!?
一応、事実年齢は5歳も年上の男性に。(精神年齢は知らないけど)

これは、あれかしら。えーと。

……『母親視点』

完全ヘタレんときから成長を見てるしね。
(そうだ、きっと)

あ、なんか落ち着いた。
気の迷いだわ、やっぱり。あ~びっくりした。ふぅ。

何か大っきなものをごまかした気がしなくもないが、あたしだって自分がカワイイ!
怖いこと考えたくないっての!


「おーい、マキ大丈夫かよ?」

事の次第を見ていたらしい悠が近寄ってくる。

くそ、どこにいたのよ。役立たず!


「あんたさっさと来なさいよ!あたしの召喚には二分で応じなさいよ!!」

学食に居るってメールしたのは十分前。
悠は絶望的な目であたしを見た。

「どこまで『マキ様』!?」

うるさい!
おかげで寿命がなんだかよくわからないまま二分縮まったじゃない!

「今日送ってこーか?」

でも心配そうに言ってくれる友人に、否定を込めて首を振ろうとしたら。


「マキは俺が送る」


透也があたしを見て、はっきりと言った。
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