私んちの婚約者
まったく。
ホントにあなたは、ずるいし、魔王だし、……イイ男。

「上等」

だから私も、負けてられない。

近づいた愁也の襟元に手を掛けて、思いっきり引っ張った。
ふわりと香るいつもの甘い彼の香りに唇を重ねる。

焦らすように、愛おしむように、ゆっくり触れ合わせていれば。
待ちきれなくなった愁也が、舌で私の唇をこじ開けて。

ーーざまあみろ。

「……っ」

息を漏らしたのを、合図に。
あとはもう、熱に溺れるように、絡ませ合って、求め合って。


大好き、って。


言葉にならない言葉で、伝えて。

だけど私の口から溢れた言葉は、

「……まいったか」

だった。


「……あんたホント、こーゆーときどうしようもなく可愛いね」


ほら、最後に勝つのは。

「そりゃどーも」

私なんだから、ね?


愁也の頬が赤く染まっているのが、なんだか無性に愛おしかった。
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