私んちの婚約者

今回は一時帰国だから、と父は一週間でまたイタリアへ戻って行った。
また今日から愁也と二人きり。
だけど、私はついぎこちなくなってしまう。


どうしていいか、わからないんだよね。


夕食の用意をして彼を呼びに行けば、愁也は携帯で電話をしていた。

「Ho capito.
……Grazie mille.」


イタリア語、喋れるんだ。
ならもうすぐにでも向こうに行けるんだろうな。


何もかも、愁也が居なくなる事実に繋がって見えて、私は気持ちが沈む。


会社での様子を見れば、彼は着々と準備を進めていた。
自宅の荷物こそまだ何もしていないけれど、そもそもここに越してきた時から愁也の荷物なんてそれほど多くない。簡単に出て行ける。

そして、あれから一度も彼から何も言われてない。



なんで?
どうして、平気なの。

もう、会えないかもしれないのに。

会えない、かも。



電話を切った愁也が私を驚いたように見た。


「梓、何泣いてるんだ?」

「ほえ?」



いつの間にか、私の頬に涙が伝っていた。
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