私んちの婚約者
追撃、婚約者
**
お昼休みの大学のカフェで、私はお気に入りのおすすめランチプレートを手に首を傾げる。

「ねぇねぇ、マキそれ何?」

先ほどから一心不乱にノートに向かうマキに、課題でも出てたっけ、と考えた。
どうでもいいけど、片手を空ける為にわざわざサンドイッチセットを選んだのかしら、用意周到なマキさん。

「お土産リストよ。
アンタが私に買ってくるイタリア土産の」

は?

「その分厚いノート全部?」

「あ、大丈夫。都市別にしといたから。ちなみにこれはミラノ編」

大丈夫でも何でもありませんが!?
それ一体、何部作なの!?全米も泣いちゃうよ。

「それくらい当然よねぇ、私のおかげでカップル誕生なんだもんねぇ?」

「えぇ~すっげえ楽しんでたくせにー」

「はあん!?何か言った?」

マキ様、悪どい。顔が悪い顔してるよ?


「感謝してます……」


釈然としないまま、とりあえずお礼を言ってみた。

ああ、また一冊更新されてる……。
進級かかった課題の時でさえ、こんなに熱心なマキは見た事が無かったと記憶してますが。


マキは鷹揚に頷く。

「うむ、苦しゅうない」

お代官様か、アンタは。


「ところでさ、いつ行くの?向こうへは」

「私は一応、来週に一回行って色々下調べしてくるよ。
もう愁也はちょこちょこ行って準備してるけど、本格的に移るのは来年かな」

そう。
まだまだ時間の余裕はあるんだ。

「でも私大学あと二年だし、もしかしたら愁也だけ先に行くことになるかも」

そう考えると、ちょっぴり淋しい。
最初の頃の私は、あんなに愁也との同居を嫌がってたのに、なんだか変なの。

私がそう言うと。

「それが恋でしょーが」

マキが笑いながら返した。


「そ、そうなのかな」

「んな可愛いこと、愁也さんに言ったら、アンタ寝かせて貰えないわよ」

「……」

「もう言っちゃったわけね」

鋭いマキは私の真っ赤な顔を呆れながら見た。


「良かったね、梓。
……せいぜい頑張って繋ぎ留めなさいよ、色仕掛けで」


……それは無茶だー。
< 59 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop