私んちの婚約者
「う~ん」

唸る私を、いつの間にか食事を終えて、さりげなく席を立った愁也が後ろから抱き締めた。


「俺としては今すぐしてもいいんだけど?」


彼が私の耳にキスしながら囁いてくる。
うう、これズルい。確信犯だ。

力が抜けてしまった私の服の裾から、大きな手が入ってきて素肌に触れた。


「や、ちょっと、愁也……
『ピンポーン!!』」


……。


このタイミング。

何だか凄く覚えがあるんですが。


我に返ったら気恥ずかしくて、私は慌てて愁也を押しのけて、インターフォンを確認せずに玄関に走った。
鍵を開けて入って来ないってことは、父じゃない。


「はいはーい」


がちゃりと玄関を開けたら。

金髪の美女が立っていた。


「Buongiorno!」


アンタ、誰!?


私は茫然と目の前の美女を見つめる。
なんだこれ夢か。それとも突撃番組かなんかか。うちの晩ご飯はもう終わりましたよ!


「うん、もう“こんにちは”の時間じゃないよね……。で、誰?」

「梓、それボケなの、突っ込みなの?」

愁也がブツブツ言いながら後ろから現れ、

「あれ?マリア?」

美女を見て驚いた様子で呼んだ。


「シューヤ!!」


美女はぱあっと笑顔になり、そのまま愁也に抱きついた――。
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