私んちの婚約者
「お、叔父さん?」

予想より遥かに近い間柄に、拍子抜けした。

こんな人居たっけ?

「お前の母さんの弟だよ。ひでぇなあ、俺のこと忘れたの?あんなに色々仕込んでやったのに」

「そのセリフ、ちょっと卑猥ですね」

私の叔父さんと名乗る変質者の台詞に、マキが目を輝かせた。


マキさああん!!?


「残念ながら、俺が教えたのはそういうんじゃないぜ。……まあそっち方面も仕込みたかったけどね~」

なんかヤバいこと言ってる!!ご近所の平和の為に、今すぐ駆逐するべきだ!

「やっぱりお巡りさーん!」

パニクる私に、マキがチョップをかまして、「落ち着きなさいよ。よく見なさい」と言った。

「痛い、マキちゃん……」

良く見ろ?

氷崎甲斐の顔。

まあ写真のママに似ている気がする。それにママの旧姓は、確かに氷崎だ。

「ママの弟、て……カイにぃ?」

小さい頃、“カイ兄”に遊んで貰った、のは覚えているような、ないような。

「カイ兄がオッサンになっちゃった……」

「お前何気に失礼だな」

カイ兄はガックリ肩を落とす。

「だ、だってカイ兄と会ったのってまだカイ兄が学生服着てたころでしょ。優しいお兄ちゃん、は何となく覚えてるけど」

「はあ?ちっげぇよ、最後に会ったのは……」

カイ兄はふ、と言葉を切った。


「お前本当に忘れちまったんだな」

不思議な色で、私を見つめる叔父。まっすぐに私を見つめて、口を開く。


「仕方ねぇな。
もう一度俺が壊してやるよ」


野獣の眼が光った気がして。

ぞくり、と肌が粟立った。
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