愛されオーラに包まれて
『本当はこういうところで見せるものではないとは思うけど、清水さんのためだから』

その紙は、10月からの人事異動発令の内示だった。

『中途採用者の配属人事が主なんだが、新たに新創刊のコミック誌の編集部が立ち上がる関係で押し出し人事もあって、羽賀部長が製作局へ異動になるんだ』

へぇ、それって清水さんにとっていいことじゃない?

『だからってわけじゃないけど、あと3年、営業で頑張ってみないか?ここで父親に泣きついて逃げるのは君の立場なら簡単だ。だけど今後逃げ癖がついてしまうし、何より、その夢の継続だって仕事で一人前にならなきゃお父さんにも認めてもらえないだろ』
『・・・』
『3年後、もし営業で頑張った上で人事評価が高いようなら、その夢の手伝い、俺がしてやってもいいぞ』
『局長』

夢の手伝いって・・・漫画家になること?

『営業で頑張りつつ、漫画家としての腕も磨くんだ』
『はい!』
「よかったじゃない、清水さん」
『ありがとうございます!私、もう一度文芸で営業、頑張ってみます』
『一石二鳥じゃない?』

ノートを閉じた日下部長が言う。
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