愛されオーラに包まれて
声は、片方は遥香。もう1人は…蒲田か。

『桐生さんに"ムックだ"と言われてしまいまして…これ、高松さんなら自分の部署の売上にしたいと思いませんか?』

さっきの話か。

遥香に"書籍"で推して欲しくて言ってるのかな。

『僕、どうしても書籍にして、高松さんと仕事がしたいんです』
『何で私と仕事がしたいの?』
『それは、その…一緒に仕事をして、お近づきになれば、そこに恋が生まれるかな、と』
『は?』

蒲田は本人に向かって言ってしまうんだ。

今年の新入社員は清水といい、コイツといい、ある意味積極的なタイプなのかな。

『あの、高松さん、僕のことをどう思います?』
『どうって、後輩だと思っているけど』
『後輩とか仕事仲間とかから、彼氏に昇格とか出来ますか?僕、新入社員研修の時に高松さんに一目惚れして、付き合っていた彼女と別れたんです』

そこまで遥香のこと狙っているんだ。
逆に別れた彼女が気の毒。

『あのさ、蒲田くん。恋って実らすにはふたりでしなきゃならないものだよ。今の君は、ただの片思い』
『両思いになればいいことです』
『よっぽど自信家なのね。あいにく、私には実っている相手がいるので、ボランティアでも蒲田くんとは付き合えません。それに私は君と違って簡単に付き合っている相手と別れたりしないから』

"それに"と遥香は続ける。
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