愛されオーラに包まれて
すると突然、朱里は自分が飲んでいた水を私の顔にかけた。

『アンタなんか大嫌い。同期だと思わないことにするから』

と、トレーを持ってひとりで返却口に向かってしまった。

私は濡れた顔のまま、朱里の歩く姿を目で追うと、朱里の前に立ちはだかった人物が。

あれは…泰河や玲奈さんと同期の根本恵美加(ネモトエミカ)さんだ。
総務局人事部の人。

声は聞こえないけど、何かを一方的に朱里に向かって話をして、朱里は少し会釈して去った。

そして私の前には…

『遥香ちゃん、大丈夫?』

玲奈さんがたくさんのおしぼりを持って私の濡れた服と机を拭いてくれた。

『顔はメイクもあるだろうから、自分でやってね』

玲奈さんは拭いてくれる手を休めずに、私に言う。

「すみません、玲奈さん」

すると、先程の根本さんもやって来た。

『あら、結構派手にやられたね。越後さん、ありゃ相当気が強いよ。猫被るのが上手いタイプだね』
『私達、斜め前の席にいたんだけど、様子がおかしいと思って見てたの。まさか水をかけられるとはね…』

"これでよし!"と玲奈さんはしゃがんでいた体を起こした。

"これ、持っていくから"と、私のトレーを下げにいってくれた根本さん。
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