タイトル


「…あっ。」


放課後、
外はうるさかった。

雨の音だ。

ひどいわけではない。

本当に
ただの雨のようだ。



「…傘、ないなぁ」


ボーッと
生徒昇降口に立っていた。


なんとなく、
中学生の頃を思い出す。






――
雨が急に降ってきて、


凄く土砂降りで、


傘もなく、

迎えがくるわけもなく、


ただ突っ立っていた。



友達もみんな帰ったあとで

傘の中に入れてくれる人もいなかった。



そしたらいきなり前に

同じクラスの男の子が来て、

一緒に走ることになった。

――――――――――――――――






そんな昔のことを
思い出していた。


「ゆかたん、
傘ないの?」

隣のクラスであろう人に
肩を叩かれた。



「そうなのぉ~><」

どこから出したのかわからないような
声を出す。



「じゃあ、駅まで一緒に行こうよ」

「えっ!?いいのぉっ!?」



信じられないほどに
驚いてみせた。





私は
前みたいに雨が降っても走りはしない。


傘がなくたって
走りはしない。



ゆっくりゆっくり
歩いて行く。





傘がなくても
歩いて帰れる。







< 51 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop