もう一度、最初から
「…じゃあ、あたしの新しい働き口が見つかるまで、ってことでいいの?」

「いいよいいよー。本当は短期って分かっている人は困るんだけど、昔のよしみで」

…まぁ、悪い人じゃないんだよね。

生真面目でダサいけど。

イケメンではないけど。

「…じゃあ、よろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げるあたし。

「こちらこそ」

「で、いつから来ればいいですか?エノキ店長」

「…いやその呼び名やめてもらっていい?」

「…エノキダケ店長にします?」

「そうじゃないです」

「わーかってるってー」

「僕、一応若い子からおじちゃんまで、取り仕切ってるんで」

「そーよねー、今後の威張り方に影響してきちゃうよね、エノキダケ呼ばわりじゃ」

「いやもう、ほんと」

「ハイハイハイ、了解でーす」

あたしは適当にエノキをあしらい、帰り支度を始めた。

とりあえず、28歳独身、何の取り柄もない女、行き倒れることはなくなった模様。
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