冷凍保存愛

「あのあと小堺のことを調べてみたんだ。そして、あいつも山際君同様に君のことを調べていた」

「そんな。なんで私のことを。あいつ、」

「ノートのことだろう? あいつだってバカじゃない。お前が自分のことを疑っているのを察知したんだろう。でだ、何がどうなっているのかを探ればすぐにその答えは見つかるさ。あいつだってクラスの一員なんだ」


 道子は悔しそうに爪を噛んだ。


「それから、真鶴のこともな」


「はっ?! なんでそこで羽都音が出てくるんだよ、あいつは関係ねえだろうが」

「強羅君っ!!」

 道子が強羅の腕を叩く。

「すまん。つい。でも先生、小堺と羽都音に接点はないはずです。クラスだって違うし会ったことだって一回しかないはず」

「そうでもない。山際君と真鶴は友達だろう? しかも真鶴はインフルエンザで学校初日から一週間休んだ。そのこともあってかクラスに友達がいない。真鶴はことあるごとに山際君のクラスを訪れてただろう?」

「そんなこと一言も言ってなかったぞあいつ」

「時間も経ってたし、言う必要もないって思ったんじゃない?」

「なんであいつ言わねえんだよ、っとに。まさか、小堺は羽都音と自分が同じ境遇だとでも思ったってことですか?」

「そんなところだろう」


「信じらんないあいつ。そんなことくらいで。羽都音とあいつじゃぜんぜん違うのに! ばっかじゃないの! あったまくる」


 鼻息荒く毒づく。


「もしかしたら真鶴ももう捕まってるかもしれない」

「どういうことですか」

「それをこれから確かめるんだ。だから二人とも協力してくれ」



 小田原の言葉に二人とも返すことばがなかった。

 今の今まで小田原が犯人だと思っていた。



「先生が誘拐したんじゃないんですね?」

「山際君、なんで私が自分の生徒を誘拐しないとならないんだい? 教師は生徒を守るものだよ」


 道子と強羅は顔を見合せ複雑な思いで小田原に目を向けた。

 バックミラー越しに目が合い、二人を安心させるようにいつもの笑みを顔に浮かべた。


< 185 / 225 >

この作品をシェア

pagetop