冷凍保存愛

「えええええ! ってねえ、羽都音。それってダメなやつなんじゃないの?」

 電話の向こうから道子の素っ頓狂な声が上がり、羽都音はおもわず電話を耳から離し顔をしかめた。

「ん、そうなんだけどね、強く言えなくてー、でもほら見つかってないし」

「そういう問題じゃない。だってあんた土曜日の学校に忍び込んでってそれあれだよ」

「それ以上言わないで!」

「じゃ、言わないであげる。で、何があった? どこまで行った?」

「どこまで? ああ、各教室を回ったり、職員室とか視聴覚教室とか、書類備品室とか」

「違う違う違います。そうじゃなくて、男女が二人きりで学校にいるんだよ。なんかあるでしょ?」

「ないよ」

 そんな不純な関係じゃないし! と抗議の声を上げた。

 いや、確かに学校に忍び込むなんてものすごい罪悪感だったけど、でもこれも人助けだと思えばこその行動だし。

 と自分を納得させ、道子も納得させようとした。



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