冷凍保存愛

 そして、胸の上に黒い箱を一つ置き、赤い電源スイッチを押した。


 一度ペイシェントの体が大きく跳ね上がり目を大きく見開き激しく痙攣したが、すぐに静かになった。


 それを見届けると男はカプセルの蓋を閉めた。


 内部がゆっくりと白くなっていくのを確認し、納得したように数回頷くとカプセルに貼ったシールの番号、




【ペイシェントファイル2】




 を確認し、部屋を後にした。



 残されたカプセルからは規則的な機械音だけが発せられ、そこにはヒトが発する音や匂いは何もない。



 未来に生きる望みを無理やり押し付けられた実験体が数個、そこに並んでいつ来るとも分からない永遠の未来を静かに待っていた。







 怨念を全身全霊に纏って。




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