冷凍保存愛

 羽都音は土日の朝にかかさずしているジョギングのコースとなっている学校の前を走り過ぎようとした時、校門から出てくるコーヅに気が付いた。

 コーヅも羽都音に気付き、小さく「あ」と言葉を漏らした。

「羽都音ちゃんおはよう。ジョギング?」

 羽都音の眉が下がり、バツの悪そうな顔になったのを見逃さなかったコーヅは、昨日のことで嫌な思いをさせてしまったことを思い出し、つとめて明るく話しかけた。


「昨日のことも併せて話がしたいんだけど、今からつきあえないかな」


 唐突なコーヅの申し出に若干引き気味になるが、今からは無理だけど、一度家に帰って着替えてからだったら大丈夫なことを伝え、昼にまたここで待ちあわせるという約束をして別れた。

 羽都音の気持ちはいまだすっきりしていないが、どうして来なかったのかを聞けるということ、それに加え、ちゃんと覚えていてくれたんだということが心に複雑にからまっていた。

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