愛を欲しがる優しい獣

「ごめんね」

鈴木くんはそう言って、強引な口づけによって上気した私の頬に触れ、ほつれた髪を優しく撫でた。

「もう少しただの友達として傍にいたかったけど、もう無理みたいだ」

間近で訴える鈴木くんがまるで違う生き物のように思えて、私は怯えていた。

それが分かったのか鈴木くんはそれ以上、何も言わずにその場を立ち去った。

……私をひとり残して。

(わた……し……)

目尻から一筋の涙が零れる。

ただの友達にはもう戻れない。鈴木くんが本当は何を望んでいるか分かってしまったから。

……線香花火の火種は、いつの間にか地面に落ちてしまっていた。

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