愛を欲しがる優しい獣

「どうしたの?鈴木くん」

私を呼び止めたのは同期入社の鈴木貴士であった。

彼はありふれた名前に類稀なる美貌を持ち合わせたアンバランスな青年だった。

ぱっちりとした二重の目に、スッと伸びた鼻筋、扇型に広がる睫毛、赤く熟れた唇。

女性顔負けの顔立ちを引き立てる180cmを優に超える身長と国立大学を主席で卒業した明晰な頭脳。

彼の功績で契約できた企業は数知れず。

同期はもちろん上司からも一目おかれる営業部の稼ぎ頭である。

同期入社のよしみで何回か言葉を交わしたことがあるものの、営業部のエースがしがない事務員の自分に何の用だろうか。

そう思っていると、鈴木青年が意を決したように口を開いた。

「佐藤さんに話があって」

「話…?」

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