愛を欲しがる優しい獣

51話:鈴木くんの事情


(あの人、誰だったのかしら……)

鍋に入れる具材を切りながら思い出すのは、鈴木くんのマンションで会った女性のことだった。

彼女を見た瞬間、鈴木くんの顔が強張るのが分かった。

彼が他人にはっきりと敵意を見せたのは初めてのことで、先に帰ってくれと言われて私は素直に頷くしかなかった。遠ざけられたのだと悟る。

彼女が誰か教えて欲しいわけではない。遠ざけられたという事実が鈴木くんとの心の距離を感じて憂鬱な気持ちにさせるのだった。

私はふうっとため息をつくと、切った具材を土鍋に放り込んだ。

(鈴木くん……。遅いな……)

時計を見てみれば、マンションで別れてから既に1時間以上が経っている。

そろそろ鈴木くんの様子が心配になってくる。

電話でもしてみようかと携帯電話に手を伸ばすと、リビングに鳴り響いたインターホンの音が来客を告げた。

玄関まで出迎えに走って扉を開けると、予想通り鈴木くんが立っていた。

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