愛を欲しがる優しい獣

52話:自由を巡る攻防


その日の勤務を終えて会社から外にでると、予想外の寒さに身震いする。

今年の残暑が厳しかった分、突然やってきた秋の空気に身体がまだ順応できていなかったのだ。

そろそろ秋物のコートをクローゼットから引っ張りださなくては、と思う今日この頃である。

(今日の夕飯は何にしようかしら……)

寒くなってきたから、温かい料理が食べたいところだ。

昨日の残り物がまだあるなと、冷蔵庫の食材と自分の胃袋の折り合いのつく献立を考えていると、見計らったかのように鈴木くんからメールが届く。

“ごめん、今日は残業”

その文面を見て、がっかりする。

大型の契約が決まりそうだと先週、言っていたからそのせいであろう。

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