愛を欲しがる優しい獣

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「私、小林と申します」

秘書さんはご丁寧に名刺を差し出して言った。名刺を受取りながら答える。

「どうも、佐藤です」

もらった名刺の肩書を見てみれば“鈴木公太郎私設秘書”とあって、鈴木くんの言っていることが間違いないと分かった。

名刺に印刷されたキャラクターは鈴木氏をデフォルメしたものだろう。当たり前だが鈴木くんにも似ていて、片手を上げたポーズに“頑張るぞ”と吹き出しが付けられているのが妙な笑いを誘う。

笑いがこみあげてくるのを誤魔化すように紅茶を啜る。

(私に何の用かしら……)

立ち話も何だからと喫茶店に場所を移したは良いものの、よく考えてみれば小林さんがあの場に現れたのは不自然だった。

……もしかして、待ち伏せでもされていたのか。

疑うように彼女の方を見れば、ふいに目が合って微笑まれる。

小林さんはコーヒーで喉を潤すと、重々しく口を開いた。

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