愛を欲しがる優しい獣

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関谷さんが落ち着くまで相当の時間を要した。

「……急に泣き出してすみませんでした」

「まあ、俺も無神経なことを言ったみたいだし。お互い様でしょう」

俺はそう言って資料のファイルを棚から取り出してパラパラとめくった。

資料室には折り畳みのパイプ椅子と小さい机もあって、人目を忍んで泣くにはちょうど良い場所だった。

泣かせた手前放っておくことが出来ずひとまず資料室にかくまったものの、俺は完全にこの状況を持て余している。

「泣いた理由を聞いた方が良い?」

そう尋ねると関谷さんは大きく息を吐いた。

「私、同期の女の子たちから疎まれているみたいなんです。同期のリーダー格の子がさっきの彼のことが好きだったみたいで……」

俺は資料をめくる手を止め、ゆっくりとパイプ椅子に腰かけると、関谷さんの言葉に耳を傾けた。

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