愛を欲しがる優しい獣

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翌朝、正面ロビーにはスーツケースを持った営業部の社員が集まっていた。

連れだって出張に向かうのだろうか。相当重要な商談なのか、お見送りの集団まで現れている。

鈴木くんの口調では何でもないことのように思えたのに、実際には社長以下、重役クラスの人物まで同行する大規模な出張のようだ。

やっぱり営業部は大変そうだ

私はスーツ姿の集団をぼんやり眺めながら、その隣を通り過ぎた。

すれ違いざまに見知った顔を見つける。

(鈴木くんだ……)

彼は相変わらず女子社員に囲まれていた。

途切れることのない激励の言葉を微笑みでひたすらかわしているようだ。

鈴木くんは私と目が合うと声に出さず、口元だけで“いってきます”と言ってきた。

私は周りに気付かれないように小さく手を振ることで応える。

なんだかこの間のもやもやがまた増したような気がする。

ぎゅっと、バッグを握る手に力をこめる。

(やだ。私ったら……)

……この距離を寂しいと思うなんて。

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