檸檬-レモン-



「はは…そこですか。僕、ここのオーナーでして」


えっと目を見張る。

見た目から年は私より少し上にしか見えない。


「恥ずかしいんですが、僕の名前が漢字で檸檬と書いて"れも"と呼ぶんです」


「れ、も…?」


胸が、またトクンと震えた。


以前、篠崎さんに会った時にも感じたあの感覚…。


「おかげで幼少期はレモンとよく馬鹿にされたものです。でも、個人的にはなかなか気に入ってるんですよ」


そう言う篠崎さんは、恥ずかしそうに視線をそらしてコーヒーを口にした。

篠崎 檸檬。


「素敵な、名前ですね」


「クルミさんだって」


「あ、いや…あたし、"クルミ"じゃないんです。胡桃沢 奈々です…」


それを聞いて、篠崎さんが固まった。


時間が、止まったかのように。



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