檸檬-レモン-
彼の腕の中で、彼の胸に頬をつける。
一定のリズムで聴こえる鼓動が、私を穏やかな気持ちにする。
「あたし、後悔してない…」
「うん。なんだか、不思議な気分です」
顔を上げると、優しい笑みを浮かべる彼と目が合った。
「間違っていたのは、僕の方だ」
どういう意味だろう、考えていると大きな手が、私の頬を包む。
この温かさが、胸をトクンと撫でて。
「クルミさんは、何も悪くない」
溢れ落ちる。もう泣かないと、決めていたのに。
「そんな、こと…」
そんなことない。
「僕は、嘘をつきました」
「え?」
よほど間抜けな顔だったのか、私を見て篠崎さんは小さく笑った。
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