月のセレナーデ
「そういえば、先生はどうして私の家を知ってるんですか?」

流れに任され、気がつかなかったが、いつの間にか誘導した訳でも無いのに家に着いていた。

その奇妙さと疑問が今、急に浮上してきたのである。

「ああ、それは前にも来たことが有るからだよ」

その返答に私はまた一段と驚いた。

「ええっ?!そうでしたっけ?!」

いつの間に…、と思っていると唖然とした私の顔をみた先生が、ぷっと吹き出した。

「何言ってるんだ。風邪を引いたときに届けてやったりしてただろ?」

そう言われてみればそうだった気もする。案外に普通な回答に、私はがっくりと肩を落とした。

もちろん、心の中でだが。

車を降りると、もう雨は止んでいた。

あれほど酷い雨がこうも簡単に降り止んでしまうものなのか。


夜空には、雲の僅かな隙間をぬって、かすかに星が瞬いて見えた。
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