声をくれた君に


「ちょっと、だめに決まってるでしょ!

そこであんたが行ったら、私と佐野くんがうまくいかないじゃない。

私がなぐさめに行ってくるから」

屋上の入り口で、私は止められてしまった。

小田さんには身長も体格も負けている。

抑えこまれて動けなかった。

佐野くんの背中がどんどん小さくなっていく。

(嫌だ、誤解しないで

ねえ、佐野くん…

佐野くん…私に…

佐野くんを呼び止めるための声をください…!)

「佐野くん!」

私は力いっぱい叫んだ。

(声が…出た…!)

「え、うそ、なんで?!」

小田さんは驚いて私から手を離した。

「佐野くん!」

佐野くんはこっちを向いて立ち尽くしていた。

今までに見たことのない、すごく驚いた顔をしていた。

「櫻田…?

櫻田の…声?」

「佐野くん…」

私は大きく息を吸った。

「好きです、佐野くん

大好きです!

どうしようもないくらい佐野くんのことが好きなの!!」

佐野くんはゆるゆると目を見開いた。

「私と一緒にいたら、私の代わりにいじめられちゃうかもしれない

佐野くんがツライ思いをしてしまうかもしれない…

それでも私が佐野くんを守るから…

だから…佐野くんと一緒にいること、諦めたくない!」

佐野くんは一歩一歩私に近づいた。

そして私の目の前で足を止めた。

「佐野くん、大好きです」

その言葉を聞いて、彼は私をぎゅっと抱きしめた。

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