無口なカレとの甘い恋
「……――いけよ」
すると、海星君がそっとあたしの背中を押した。
「あいつに送って行ってもらえ。どうせ家もすぐそばだし」
「海星君……」
「雨で濡れて気持ち悪ぃし、早く帰ろうぜ」
海星君はそっとあたしの目の下の涙を指で拭ってくれる。
そして、あたしの頭を優しく撫でた。
「じゃあな、姫子。風邪ひくなよ」
海星君はそう言うとクルリとあたしに背中を向けて歩き出した。
『じゃあな』
その言葉が胸に突き刺さる。
ごめんね、海星君。それと、ありがとう。
あたしは海星君にクルリと背中を向けた。
そして、あたしと海星君はお互い逆方向へと歩き出した。