*短編集* 『 - 雨 - 』


高校の頃から面倒見のいいヤツだった。
頼られると面倒くさそうにするくせに、放っておけなくて結局世話を焼いてあげちゃうような、そんな男。

だけど……近づこうとしても最後の一歩の距離は詰めさせない、そんな男。

「で、その後輩の相談はうまく片付いたの?」
「さぁ。聞いてくれって言うから聞いたけど、どうなるかまでは俺の知った事じゃないし」

こんな風にわざと悪ぶるのはなぜだろうといつも思う。

ちゃんと相談を聞いてあげてから今みたいな台詞を言ったって、黒田は傍から見れば十分お人よしで、それはもう揺るがないっていうのに。
毎回律儀に「俺そんないいヤツじゃないし」みたいな発言をする黒田におかしくなる。

黒田を慕う友達や後輩がわんさかいるのは、面倒見がいいからって言葉に尽きるし、その取り巻き集団がお人よしを実証する何よりの証拠だっていうのに本人は気づいていないのだろうか。

素直にいいヤツだって褒められておけばいいのに、変な男だ。



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