。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。

*戒Side*






******************

** 戒Side **




指が―――


ツナ缶の先で切ったところが熱を持ったように熱い。


ほんのちょっと切っただけなのに、流れ出る血を見て




―――自分がおかしくなっていくのをはっきりと感じた。




血を見たところで、今さら何とも思わないが……
(何せ小さい頃は兄ちゃんたちとの喧嘩で散々な目に遭ったからな)


まだ完全に止血されていない指先から血の玉が浮かび上がっている。その指先が僅かに震えていた。


カラン……


小さな音がして顏を上げると、朔羅がいつの間に持ってきたのかゴミ袋にツナ缶を入れていた。


何てことない、ゴミ袋の中で缶が落ちる音だってことすぐに分かったが


俺の中でその音は―――




確実に何かが壊れていく音に



聞こえたんだ。




「じゃぁ、あたしこれ捨ててくるから」


朔羅はゴミ袋を掲げるとそそくさと洗面所を離れて行った。








< 207 / 439 >

この作品をシェア

pagetop