。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。


考えた所で、急にばかばかしくなった。別に進藤先輩にどう見られようと思われようと、どうだっていいじゃん。


それより


「何か、先輩に話聞いてもらってちょっと楽になりました。


話聞いてくれる相手が先輩でよかった」再びストローに口を付けると


「へ!?」


今度は先輩がアイスコーヒーのストローがポロリ。


「え?」顔を上げると


先輩は顔を真っ赤にしてて、わたわたと手を振っている。


「いや!俺、そんなこと言われたの初めてで、ちょっとびっくりしちまって……


だって、俺らって大抵クダラナイことで盛り上がってバカばっかやって、でも『あー、くだんね』とか思ってて、でもそのクダラナイことをすることで存在意義を示してるって言うか…」


先輩は早口で言って忙しなくストローに口を付ける。でもアイスコーヒーは一向に減ってない。


「だからさ、何て言うか……誰かに何かを相談したこともないし、されたことも―――初めてだから」


と視線をあたふたと窓の外で彷徨わせている。


あたしは思った。


この人も大概不器用なんだなーって。


そう考えてると、窓の外を見ていた先輩が


「あ!」


と、突如声を挙げた。


「え?」先輩の視線の先が気になって見ると


「あいつ…新垣 エリナを尾け回してる淫行教師」


とちょっと身を乗り出し、あたしに耳打ち。


ホントだ―――!


例の淫行コーチは全体的に黒っぽい服装で、人目を気にしたようにキョロキョロと辺りに視線を配っている。


やがて、こちらに振り返る気配があって


「ヤベっ!リコちゃん!」


先輩に肩を押さえられ、あたしたちは窓ガラスの下へ何とか身を隠した。


何であたしたちが隠れなきゃいけないのよ!と、あのストーカーにイラつきながらも、先輩と揃ってそろりと頭を出し窓の外を窺うと、あのストーカーは駅とは反対方向に歩いていった。


エリナの家のある方じゃない。


「どこ行くんだろ。今度は何企んでるんだろ」とその行先を睨んでいると


「行こうぜ」


先輩が伝票を掴んで立ち上がった。ついでにあたしの手を引く。


「え!?え?行くってどこへ?」


「決まってんじゃん。アイツを尾行して、尻尾捕まえてやろうぜ!」


ぇえーーー!!!!



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