godlh
問題児
 愛内さんは、いつも一時限目と二時限目の間に、廊下に出て、僕のクラスにいる友達と話していた。
今日も、もちろん彼女が教室から出てくると思って、僕は変にコソコソしながら廊下に出た。でも、彼女は出てこない。それどころか、彼女のクラスの女子は誰も出てこない。不思議に思った僕は、彼女のクラスから出てくる哲に、それとなく聞いてみた。
「哲。」
こいつも、惟と一緒で古い付き合いの友達だ。
「何?秀郎。」
「いや、お前のクラス、何かあったの?」
「もう、最悪だよ。聞いてくれよ・・・。」
 僕の言葉をきっかけに、哲はまるでダムが決壊したかのように話し始めた。
 「あいつだよ。あいつ。」
 哲の指さした方を、僕は目を凝らして見た。けれども、そこには女子たちが群がっていて、何があるのかよくわからなかった。
 「あいつって、誰だよ。なんか、女子が群がっているけど・・・。」
 「その真ん中に男がいるだろっ。よく見てみ。」
 女子の隙間を覗くように見てみる。僕は、背筋が凍った。
 ―――あいつだ・・・。
 今朝見たあいつが、そこにいた。
 「なんだよ。あいつ・・・。」
 「転校生だって。もう、あんな見るからにやばそうな奴が転校してくるなんて、俺の人生、終わったって感じだよ。」
 哲の言う事は、僕にもよくわかった。あんなに危なそうな奴が、同じクラスにいると思うと生きた心地がしない。哲に同情せずにはいられなかった。
 「最悪だな。でも、なんであいつ、あんなに女子には人気なんだ?」
 「わかんね?クラス中の女子は、あいつに取られるわ、怖くて何もする気が起きねえわ、って感じで、もう本当にどうにかしてくれよって感じだよ。」
 「でもさ、お前のクラスにはもう一人、問題児がいたじゃん。あいつは、何も言ってないの?」
 「それが、こういう日に限って来てないんだよなぁ・・・。」
< 10 / 206 >

この作品をシェア

pagetop