godlh
さっき、涙を拭った人差し指を差し出して、あゆみに優しく言った。その言葉が、彫野の優しい言葉が、あゆみの心に築かれていた大きな壁を取り壊した。
泣きじゃくりながら、壁の中にあった気持ちをすべて彫野へと渡した。決して聞き取れないその言葉を、まるで全て理解するかのように受け取り、そして、昇華していった。ひとつ、またひとつと昇華されるうちに、どんどんあゆみの心は救われていった。
―――彫野君・・・。
この時、はじめて梢の言っていた意味を、あゆみは理解した。
―――そっか。梢も彫野君の事好きだったんだ。でも、絶対に渡さない。どんな事があっても、どんなに周りに嫌われたって、絶対に彫野君は渡さない。

あゆみの中にふたつの気持ちが生まれた。

人を好きになる純粋な気持ち。
そして、世界中の誰をも殺しかねない激しい殺意。

泣きじゃくったあと、あゆみは素直な気持ちを口にした。
「大好き。」

その言葉を聞いて、彫野は笑みを浮かべた。
―――勝った。
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