godlh
愛内さんと一緒にいる時のあいつは、至って普通だった。
いや、普通じゃあり得ないくらいにモテていた。そんなあいつを離さないように、そんな感じで愛内さんは、必死で腕にしがみついていた。僕好みのやわらかそうな胸が、あいつの腕でつぶされていた。
―――うらやましい・・・。
一瞬、見とれてしまった。
ガタン。
マンガにありがちなミスをした。愛内さんの胸に見とれていた僕は、前を良く見ていなかった。足元にあったゴミ箱を、勢いよく蹴飛ばしてしまった。
「ん?」
ふたりは、ほぼ同時に振り返った。
慌てて物陰に隠れた。
―――見つかるな。見つかるな。
愛内さんとあいつは、電車で学校に通っている。つまり、ここには僕はいるはずはない。
見つかったら、僕は色んな意味でやばい状況になる。
―――見つかるな。見つかるな。
どれだけ心の中で念じたかわからない。
―――見つかるな。見つかるな。
電柱の影から、そっとふたりの様子を覗いた。
「まっ、いいか。」
愛内さんはそう言うと、またあいつの腕を強く抱き締めて行ってしまった。
そんな感じで、少し問題はあったけど、あいつは愛内さんといる時には何もなかった。
僕は心のどこかで、この間の体育の時に見たものは、幻だったと思いたかった。
ネットで見たあれも、全部嘘だと思いたかった。
そうすれば、普通の恋愛ゲームみたく、どうにかすれば、彼女が、僕の彼女になる可能性もあると思ったからだ。
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