わすれなぐさ

そんなにしてまで俺は何が欲しいんだろう。


「久世ー久世は休みかー?」


俺のそんな思考は出席確認中の担任のそんな言葉にいとも簡単に消え去る。


「久世さん鞄ないから来てないよー」

「彼奴はまたサボりか…ったく…」


それは毎朝の行事のような光景で、
ただ俺は少し、あまり顔も覚えていないようなそのクラスメートのことが羨ましかった。


自由なその人が。


その時、初めて気付いたことは、俺は恵まれているけれど、酷く縛られているということだった。


毎日毎日、同じ事を繰り返す自分が嫌だったんだ。


環境に、人に恵まれることよりも、
自分に自由になりたかったんだ。


俺はそんなことに気が付いて、その空いた席を見つめながら溜め息を飲み込んだ。





       ないものねだり
(欲しいものは手に入らない、なんて)(そんなの1番よくわかってる。)


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