哀しみの瞳
病室の外には、高橋夫妻が、心配そうに立っていた。


秀は、首を横に振ることで二人に、ダメだったことを知らせた。



二人は、秀にある場所を案内した。


病院の中にある、図書室を小さくしたような部屋であった。



(高橋)
「由理は、ここでほとんど、一人で、本を読んでいるんです。ただひたすら本を開いて見てるんです。一日中ですよ!何を考えて、そうしていたのか。私達にも判らないですが…」



(秀)
「本をですか?……………一日中、本を………」


そう言えば………


由理が小さい頃、秀一の帰りを待ちわびて、寂しがった時、秀一はよく、由理に言って聞かせていた。


(秀一~
由理?僕が帰るまで、僕の本を読んで待ってて?いい?判った?そしたら寂しくないから…って)


秀は、そのことを今思い出した。



由理???もしかして……お前は……秀一を待っているのか?…………


そうなのか?……そうなんだな?…
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