ホシテントウ
 私はいつも知らずにこうして空を仰いでいた。

 誰かに助けて欲しいとき、答えの分からない疑問に困ったとき。

 昼間見る空に星はない。けれど、見えないだけで、私が見上げた空にたまたま、星が流れていたら。

 ホシテントウの飛行はまるで、地上に落ちた流れ星が、願いをかなえて、また空に帰っていくようだった。



 しばらくしてホシテントウは、再び舞い降り、迷っているように近くの宙を飛んでいた。

 私が手を差し出すと、カシャっと手の中に落ちてきた。

 その瞬間、わずかにあった黄金の夕陽が山の稜線から消える。

 最後の光で私はホシテントウの背中の模様を見た。

 星型が三つしかないように見えた。

 夜になった。

 ゆっくり深呼吸して夜空を見上げる。

 小さなホシテントウの星が一つ、この晴れた夜空の降るような星屑の中に帰っても、空の見た目は何も変わらない。

 ずっと昔からこうしてあったかのように、地球を包み込んでいる。

 中天を見やれば、天馬星座の胴体の正方形を構成する四つの星が遠くで瞬いていた。

 意思を持った者を助けた天馬がいたのは神話の時代で、その天馬もいまや星座となって、秋の星座に混ざり私たちの外側を、まわっているだけ…



 ……本当にそうだろうか。


 私は手の中の三つの星をしばらく見つめた後、草むらに戻す。

 小さなホシテントウは一瞬で夜にまぎれた。


 私は、ススキの合間をそっと歩いて、わき道に出る。

 さようなら、ホシテントウ。
 
 その小さい体が流れ星や、ましてや天馬だった時があったなんて、けっして信じられはしないけど―――

 背中の星が消える前に。

 また誰かが願ってくれるといいね。




< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

オートマトン -Online- 推敲中

総文字数/137,282

ファンタジー197ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
XX現在推敲中ですXX 世界の果てには、太陽をあやつる国がある。 その国の名は、シャテラリア国。 別名、太陽国という。 遠い神話の時代から、シャテラリア国の王は、太陽を呼ぶ笛『天恵のオカリナ』を使い、毎朝、世界に太陽を呼び込み、人々に希望の光を与えていた。 その世界の端っこ、大陸から離れた孤島で、いま、1人の少女と1体のからくり人形の旅が始まった。 『ようこそ、オートマトン -Online-へ』  注意:ヘッドギアを装着してください。 パソコンの画面に表示された言葉に従い、狩野結衣はオンラインゲーム専用のヘッドギアを装着した。
ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)

総文字数/54,815

青春・友情92ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 大学卒業とともに届いた一通の手紙。  差出人の欄には、ラベンダー荘・管理人、菅野恭子と記されていた。   「ラベンダー荘は貴女を歓迎します。  渡辺優子さんの入居は(4月1日~)です。」 『失くしたものが見つかる』と噂されるラベンダー荘。  私と同じく、謎の答えを追い求める「信也」  私たちの謎の先を行く「かおり」  記憶を無くした歌うたい「アキラ」  放浪の旅人「康孝」  ラベンダー荘の謎を解き明かし、失ったものを手に入れるのは、はたして誰か。  そして、物語の最後に明かされる最大の謎とは?
トロピカルドーム

総文字数/7,505

ホラー・オカルト13ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ⅩⅩ オカルト ⅩⅩ 太古の森を再現した熱帯植物園。 『トロピカルドーム』 「太古の昔から変わらない姿で、いまも生き続けている植物って知ってる? 見た目は巨人とあまり変わらなくって、大地に張った根を見て初めて植物だと分かるの。 進化を必要としない究極の生命体なんだって。」 圧倒的な生命力を前にしたとき 少年の中で何かが変わっていく。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop